「下顎角部骨切り術後の止血を目的とした2期的閉創法」
第110回日本美容外科学会学術集会 / 2011年1月 / 名古屋院 院長 山岸誠治
目的
術後血腫の防止については、(1)電気焼却などによる直接的な止血、(2)出血点への圧迫止血、(3)ドレナージの3つの方法があるが、下顎角部骨切り手術には以下の特殊事情がある。
(1)電気焼却などによる直接的な止血について
下顎骨の裏側からの出血の場合、直接見ることができない。
切除した下顎骨からの骨髄性の出血は骨ろうなどによる手段でしか即時に止めることができないが、骨ろうは術後感染の可能性がある。
(2)出血点への圧迫止血について
圧迫は出血点に接して行なわれなければならないが、下顎角を切除した後は首と下顎角の段差が不明瞭になるため、外側がらガーゼなどを当てたうえで包帯を巻いても、下顎体に対する圧迫にはなっても、切除断端部からの骨髄性の出血に対しては直接的な圧迫になりにくい。
(3)ドレナージ
そのような不十分な止血効果を口腔内ドレナージで補おうとしても、下顎体に対する包帯圧迫により、ドレーンは狭小化して詰まりやすく、ドレーン自体には出血に対する直接的な止血効果がないため、出血が起きると進行拡大していく。
方法
以上の特殊性を考慮し、当院では手術後ガーゼを下顎角部にパッキングした状態で抜管し、翌日ガーゼを除去して縫合している。
(1)ガーゼは片側2~3枚をつなげて使用し、下顎の断端や裏側をしっかり圧迫するようにする。包帯は使用せず、フェイスバンドで軽く圧迫する程度にする。
(2)翌日、静脈麻酔下で、ガーゼを除去し、洗浄後縫合を行なう。
(3)1時間ほど、包帯で圧迫し、出血が起きないことを確認したうえで退院する。
結果考察
えらの術後圧迫を上記の方法に変えたことによって、従来10%ほど起きた大小の血腫形成が全くなくなり、軽度の血腫形成による一時的な左右差などの訴えもなくなった。また、カウンセリングにおいても、術後の腫れについて従来は個人差があって人によっては術後とても腫れることがあると説明する必要があったが、この方法に変えてからは、そのような個人差が生じないため、患者さん自身が手術スケジュールを立てやすくなったといえる。