「内視鏡下下顎角部水平骨切り術」
第25回日本頭蓋顎顔面外科学会学術集会 / 2007年11月 / 東京院 院長 広比利次
概要
1989年Baekが美容目的としての下顎角骨切りを報告して以来、その術式の改良、概念に関して多くの報告がみられるが、依然口内法にてオシレー ティングソーを使用した骨切りが標準的な術式となっている。しかし手術結果は必ずしも満足すべきものでなく、さまざまな合併症も報告されている。
その理由としては、口内法では狭い術野に加え、骨面の角度も合まって盲目的骨切りを余儀なくされることも多く、勘に頼った骨切りとなるため正確性、安全性など求めることは難しい。またオシレーティングソーは口角でその可動性、角度が制限され、下顎枝後縁で垂直方向の骨切りとなる。結果として術後形態では Gonial angleが増大し、角部喪失、角の前方移動、二段角などの不自然な変形が残ることが多い。
下顎角は本来わずかばかり角張り、突出しているものであり、本手術の目的は下顎角をなくすことではなく、その存在を目立たなくすることにある。できる限り生理的で自然な角・段差の少ない滑らかな下顎角を残すような骨切り法を行うべきである。そのためには、従来法の欠点である盲目的骨切り術、垂直骨切り術(=anglectomy)の2つの課題を克服する必要がある。
そこで演者は盲目的骨切り術の改善策として、口腔内アプローチにて内視鏡付きリトラクターで術野を展開し、角部にて正確な骨切りを行っている。その際に選択する器械としてオシレーティングソーは不適であるため、演者はコントラアングルドリルと平ノミを併用し、Gonial angleを考慮しながら新しい下顎角を形成する(=angle plasty)目的で水平骨切り術を行っている。本術式は術前プランに沿った正確な骨切りが行え、再現性があり、安全である点も含めて従来法の欠点をすべて克服した優れた方法である。