「重度眼瞼下垂の長期経時的変化の1症例」
第29回日本美容外科学会総会 / 2006年10月 / 高松院 院長 古屋富治雄
はじめに
眼瞼下垂の手術によって得られる結果を、眼瞼下垂を生じる前の状態にどれだけ近づけることができるかは、患者の満足度にもつながる。眼瞼下垂の治療を行うに際して、眼瞼下垂を来たす以前の写真は、術後の瞼裂をどの程度改善させるかの非常に重要な参考資料となる。
目的および方法
加齢により眼瞼下垂を生じた症例において、手術前の50年前までの過去の写真を参考にし、重度の眼瞼下垂に至った経時的変化および腱膜前転法での改善の程度について検討を加えた。
症例
患者は60歳女性。加齢により生じた眼瞼下垂のために、数十年前より徐々に視野が狭くなってきた。初診時に重度の眼瞼下垂と上眼瞼の陥凹を認めた。挙筋機能は1 mm、最大開瞼時に瞼裂は2.5 mmで、視野障害のため日常生活に支障が見られた。また、眼位、眼球運動および瞳孔の異常などは認めなかった。
既往歴
10年来のアレルギー性結膜炎で、指で上眼瞼を強く擦ることを繰り返していたが、数年前より内科で内服薬の処方を受けてからは、症状は消失した。
手術方法
眼瞼下垂は腱膜前転法のみを行い、上眼瞼の陥凹に対しては、真皮脂肪移植を行った。
手術前の瞼裂の経時的変化
10歳代から60歳代に至るまでの、10年毎の写真から判断すると、20歳台で瞼裂は最大で、30歳台で眼瞼下垂が軽度出現し、その後徐々に進行していった。
結果
手術により、瞼裂および上眼瞼の陥凹の改善が見られ、日常生活における患者の満足度も得られたが、腱膜前転法による眼瞼下垂の改善には限界があり、20歳台の頃のような瞼裂までは改善しなかった。
考察
本症例においては、加齢に伴う眼瞼下垂の原因として単に腱膜部のみに起因するものではなく、ミュラー筋または眼瞼挙筋の機能障害やそれ以外の何らかの要因が関与していることが示唆される。