「真皮移植術(dermisgraft)を用いた隆鼻術の経験」
第28回日本美容外科学会総会 / 2005年10月 / 大阪院 金澤浩之
目的
隆鼻術の材料には、シリコン、耳介軟骨、筋膜、長掌筋腱、肋骨、腸骨、頭蓋骨外板あるいはヒアルロン酸などが用いられる。今回我々は皮膚の表皮を除去した あとの真皮を遊離移植した症例について報告する。
対象・方法
症例の内訳は8例で、外傷性鞍鼻および斜鼻が5例、シリコンによる皮膚の菲薄化1例、唇顎口蓋裂による鞍鼻が1例、隆鼻目的に異物を用いたくないという症 例1例であった。
皮膚の採取部位は患者の希望により異なるが、皮膚が厚くて毛の少ない背部を主に用いた。皮膚を全層にて採取した後、脂肪および表皮部分を切除し鼻骨骨膜上 にポケットを作成し挿入、ボルスターあるいはプレートにて外固定し真皮移植を行った。
結果
症例の経過観察期間は14~26ヶ月であるが ほぼ満足な結果を得た。
考察
外傷後や唇顎口蓋裂での隆鼻術は、皮膚の瘢痕が強くシリコンを用いると露出する可能性が強い。また骨格性および軟骨性斜鼻に対して骨切り術に鼻中隔矯正術 を併用した場合は、鞍鼻になる可能性があるがその際手術により粘膜に穴が開いていることが多く同時には異物を用いることは危険である。
Dermis graftは毛嚢、脂腺を含むため嚢胞形成、収縮吸収およびdonor site の瘢痕などの問題はあるが、生着が早く柔軟性に優れており鼻背部皮下組織が薄くなった症例や瘢痕組織で血行が悪い場合での隆鼻術の遊離移植材として一つの 選択枝であると思われる。