「下顎前突症(反対咬合)に対するオトガイ形成術の有効性と限界について」
第27回日本美容外科学会総会 / 2004年10月 / 東京院 浪川浩明
目的
口腔外科ではなく美容外科を受診する下顎前突症患者における主訴の多くは、咬合の正常化よりも、Prognathism(前突)の改善要求である。勿論、 咬合改善後に随伴する顎変形に対するFacial Contouring surgeryを行うのが第一選択の治療法である。咬合の改善、即ち歯列の移動は歯科的問題(死活歯の問題や、補綴治療の必要性など)を孕むばかりか、術 後矯正、後戻り等の問題も無視できない。一方、長年慣れ親しんだ咬合に対する機能的不満が希薄な場合が多い事も事実である。そこで、軽度の下顎前突症に対 し、咬合はそのままに、オトガイ形成術(オトガイの後退、及び必要に応じた顎長短縮やオトガイ形状の改善)のみによるFacial contouring surgeryを試み、有効性と限界を調査した。
症例及び方法
(1)対象患者:総数7名(男性3名、女性4名)、年齢22歳~41歳(平均35.1歳)
(2)調査期間:2001年4月1日~2004年3月31日
写真比較による改善度、問題点などを盛り込んだ当院独自の点数表を作成し、術後3ヶ月時に、患者本人の主観により採点させた満足度評価を調査した。
結果
患者の主観的満足度は、平均77.6点(66点~92点)と比較的高い評価を得た。
考察
下口唇の突出感は、歯列の移動を行わずして改善させる事は難しい。そして評価のマイナスポイントもこの点に集中した。また、審美的評価基準が曖昧で、有効 性の判断を主観的満足度に委ねねばならなかったが、各患者においては歯列移動を行った場合の術後QOLと比較しようがない。もしこの点が正当に評価された なら、さらに高得点となり得た可能性もある。客観的に言える事は、重症はともかく、軽度の下顎前突症の場合、オトガイ形成術単独でも、審美的に十分に満足 度の高いFacial contouring surgeryとなる可能性が高い。