「大腿部の脂肪吸引における留意点とわれわれの工夫」
第27回日本美容外科学会総会 / 2004年10月 / 高松院 梁淑姫
はじめに
大腿部の脂肪吸引を行う場合に留意すべき点のひとつとして、大腿部と臀部との移行部をいかに処理するかという問題が挙げられる。できるだけ細い脚を得たい という患者の希望に沿って大腿近位端まで可及的に脂肪を吸引する場合(従来法Aと略す)は、大腿近位部の周径は減少するものの、臀部の下垂をきたす可能性 がある。しかし臀部下垂を防ぐために「支え」となるだけの脂肪を大腿近位端に残した場合(従来法Bと略す)は、大腿近位部の周径減少率が下がる。従来法に おいてはこのように、「大腿近位部の周径減少」は、「臀部下垂のリスク」を背中合わせの問題として抱えてきた。そこで当院では十分な周径の減少が得られ、 かつ臀部下垂のリスクを最小限に抑えられるように手術法に改良を加え、良好な結果を得たので報告する。
症例・方法
症例は、2001年4月から2004年5月にかけて当院で大腿全周の脂肪吸引術を施行した51名である。麻酔は硬膜外麻酔を用い、適宜プロポフォールによ る静脈麻酔を併用した。脂肪吸引の手技はtumescent法に準じた。(1)「大腿近位部の周径減少」に対する患者の希望と(2)臀部・大腿部の皮膚等 の性状から予測される「臀部下垂のリスク」とを考慮して、術式の決定を行った。従来法Aはヒップラインの維持が困難なため採用しなかった。2001年度は 従来法Bに改良を加えた術式(B変法)を行い、結果について検討した。更に2002年度からは臀部移行部の脂肪吸引も併用して、比較検討を行った。
結果・考察
「大腿部では近位端に到るまで、深層から中間層の脂肪を積極的に吸引すること」と「臀部移行部では比較的広範囲にわたり、中間層から浅層にかけての脂肪を 吸引すること」とを併用した症例で、最も良好な結果が得られた。この術式(改良法と略す)はB変法に比べても術後の満足度が高く、2003年度以降は原則 として改良法のみを施行している。
それを通じて、オフィスサージャリーで扱いうる症例の範疇に対し検討したい。