鼻柱下降術 施術内容
鼻の中では、地味な部位が鼻柱です。単独で行うことは決して多くないのですが、鼻尖、鼻翼と密接な関係にあり、美しい鼻を形成するには、鼻尖、鼻翼、鼻柱のバランスが重要です。鼻柱が吊りあがった状態を軟骨移植で改善します。軽度の変化を求める場合は、鼻柱の適切な位置に軟骨を移植します。しっかり鼻柱を下げる場合や鼻尖も同時に下げる場合は、鼻中隔延長術を行いますます。
お勧めの方
・鼻柱が後退している方
・鼻柱が後退しているため、鼻尖が太く見えたり、鼻翼が張りだして見える方
・鼻柱だけをしっかりと下降させたい方、鼻尖とともに鼻柱を下降させたい方
【鼻柱columella】
鼻柱は鼻形成術において評価、討論されることが少ない部位であり、鼻の中では他部位と比べて地味な存在であり、軽視されがちです。確かに鼻柱だけ単独で手術を行うことは決して多くはないのですが、鼻尖、鼻翼とは極めて密接な関係にあり、“美しい鼻”を形成するためにはこれら3部位の絶妙なバランスが要求されます。
1)鼻翼-鼻柱関係(alar-columellar relationships=ACR)
鼻翼と鼻柱との位置関係(ACR)は正面のみならず、側面からも重要です。
美しいACRすなわちとは、正面では両側鼻翼基部を結んだ線より鼻柱がほんの少しでも下方(尾側)にあることが重要です。すなわちこれら3点を結んだ三角形が下向きを頂点とする二等辺三角形であることが重要です(columellar-alar triangle)
鼻柱基部が鼻翼基部より頭側に位置する場合には、鼻柱後退=retracted columellaと呼ばれ、鼻尖の太さ、鼻翼の張り出しが強調されるため良好な形態とは言えず、美容的には治療の対象となります。
なおcolumellar-alar triangleは、鼻柱、鼻翼の相対的な関係であるため、改善手術を計画する際には、個々の症例に応じて鼻柱を下降させるべきか、鼻翼基部を上昇させるべきかを決定します。その際、鼻全体の長さ、鼻柱基部から上口唇(赤唇)までの長さ、などを評価します。但し実際には外科的に鼻翼基部を上昇させることは難しく、鼻柱を下降させる手術が適応になることが圧倒的に多くなります。
2)鼻柱口唇角(columellar -labial angle)
側面から評価する際の鼻唇角は重要で鋭角過ぎる、すなわちめり込んでいるような状態では口唇とのバランスが悪いです。鼻柱基部と上口唇との相対的関係によりますが、上顎前突があることも少なくなく、その場合には、LeFort1型骨切り、上顎分節骨切りが適応となります。鋭角過ぎる鼻唇角を改善すべく鼻柱基部の増大について後述します。
代表的な鼻柱形成術
臨床的にはretracted columella、hanging columellaが主に治療の対象となります。但し鼻尖、鼻翼とのバランスが重要であり、複合手術の一環として行われることもあります。
鼻柱のretractionあるいは hangingは、鼻を側面から見た際にも目立ちます。retracted columellaは、鼻柱の後方3分の2が鼻翼縁より下方向に突出していないため、側面から鼻柱が見えず、短鼻が強調されます。hanging columellaは、逆に側面で鼻翼縁より下側に過度に鼻柱が見える状態です。患者様の訴えとしては鼻孔の中が見えすぎるといった表現をとります。しかしこれら側面像は、鼻柱と鼻翼との相対的な関係であるため、鼻全体のバランスから鼻柱あるいは鼻翼のどちらが治療の対象になるのか見極める必要があります。
鼻柱下降術
鼻柱が上方に吊りあがった(めりこんでいる)状態では、鼻の形態は決して美しいとは言えず、軟骨移植などで改善を行います。
1)鼻柱部軟骨移植(floating columella strut)
floatingの意味は浮遊しているということですが、この場合には軟骨を移植する際に、周囲組織とは縫合などせずに鼻柱内に置いてくることを表現しています。
①デザイン
術前に患者様を坐位にして鼻柱を下降させたい部位をマーキングします。鼻尖から鼻柱基部の間でどの部位を下降させたいのかを患者様の希望も併せて把握しておきます。鼻尖も同時に下方延長すべき場合には本法ではなく鼻中隔延長が適応になり、floating columella sturutでは鼻尖は下降しません。
②軟骨採取
術前デザインから採取すべき移植軟骨の長さを決定します。ドナーとしては耳介あるいは鼻中隔を選択しますが、採取すべき軟骨は通常は20㎜×5~8㎜です。通常鼻中隔軟骨を選択することが多いのですが、その理由は、厚みが薄くて、まっすぐな軟骨が採取できるからです。鼻中隔の軟骨が小さい場合には、耳介軟骨を使います。やや大きめに採取しておき、彎曲していない部位をうまくトリミングして使用することになります。
③鼻柱部軟骨移植
クローズド法で両側鼻翼軟骨内側脚間にポケットを作成し、移植軟骨両端に細いナイロン糸を通しておき、鼻柱の適切な位置に軟骨を挿入して、ナイロン糸を鼻柱皮膚から引き出します。
④スプリント固定
引き出したナイロン糸はスプリント(ギプス)に適度な張力で固定します。スプリントは7日目にはずして、すべての糸を抜糸します。その時点ではやや過矯正気味ですが1~3ヶ月ほどでわずかに後戻りして最終的に良好な位置に固定されます。
本法は、クローズド法で行うことができ、軽度の変化を求める患者様には良い適応となります。手技的にそれほど難しくはなく、手術時間もそれほど要しないなどのメリットがあります。
鼻中隔延長術
鼻柱だけを下降させる場合でもしっかりと下降させたい場合、また鼻尖とともに鼻柱を下降させたい場合にはfloating columella strutではなく、鼻中隔延長術が適応となります。軟骨移植を行うが、ドナーとしては鼻中隔軟骨、耳介軟骨、肋軟骨などが挙げられます。
①切開
手術は鼻柱だけを下降させる場合にはクローズ法でも行えるが、同時に鼻尖まで下降させる場合にはオープン法を選択します。
②剥離
鼻翼軟骨内側脚から中間脚の間を剪刃で剥離して、鼻中隔の下端を露出します。軟骨膜下に局部麻酔を注入して剥離子で軟骨膜を破らないように丁寧に鼻中隔軟骨の全貌を露出します。
③軟骨移植
レシピエントである鼻中隔軟骨は正中にあるとは限らず、移植する軟骨のわずかな彎曲などの形態も加味して最適な位置、方向で鼻中隔軟骨に縫合固定します。できる限り鼻中隔軟骨とのoverlap部分を増やして、安定化を図るようにします。
④鼻柱延長
移植軟骨の安定性を確認後、次に内側脚を移植軟骨下端に縫合固定します。鼻柱の偏位がないことを患者様の足元から見て確認し、側面からは鼻柱の下降の度合いを確認します。
鼻柱下降術の特徴
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施術時間
約60分
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麻酔
静脈麻酔/局所麻酔
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腫れ具合
★★☆☆☆
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ダウンタイム
1週間
抜糸 7日目位 -
副作用(リスク)
腫れ、内出血が長引く、感染、傷痕、色素沈着、異物反応、痛み、しびれ、その他知覚異常、脱毛、組織壊死、視力障害、アレルギーやショック反応などの合併症がおこりえます。
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