「患者の希望する『エラ削り』は本当に下顎角形成術のことか?」
第28回日本美容外科学会総会 / 2005年10月 / 東京院 院長 広比利次
目的
小顔を目的とした“エラ削り”は顔面輪郭形成術ではもっともポピュラーな手術のひとつである。実際の患者の希望は、正面顔で『ほっそりとした卵型の輪郭に』というものが多く、側面顔に関しては特に希望を述べないことが多い。これらを考慮した場合、 一般に行われている下顎角形成術は“いったい患者の要望を満たしているのか?”どうかを解剖学的・臨床的に検証する。
対象
2000年3月から2005年5月までにいわゆる下顎角形成術451例を行った。術前に患者の希望を調査したところ、90%以上の症例で側面顔での変化より正面顔での変化を重視していた。
方法
患者の要望を分析し、下顎形態を3次元的に捉えて、画像(セファロ・CT)も含めていかなる手術を行うべきかを検討する。
結果
患者のいう『エラをほっそり』とは正面顔での改善を意味する。正面顔の改善を目的とした手術は、下顎角部に限定した骨切りとは異なり、下顎枝から体部、オトガイ結節まで含めて広範に骨切り・骨削りが必要となる。
考察
エラの改善に関して注意すべき点として、“エラ”と称する部位に対する理解が患者と術者の間で異なることが多い。演者の考えでは、臨床的には“エラ”を“正面顔でのエラ”と“側面顔でのエラ”の2つに分類すべきであり、この2つは解剖学的位置が一致しない。患者の希望に添った手術を行うにはこの2つの“エラ”の存在と位置関係を正しく理解する必要がある。但し、実際の正面顔での輪郭改善には骨格の他に咬筋も関連してくる。また限界ラインとしての下歯槽神経の走行も重要なポイントとなる。これらを総合し、患者の希望する『エラ削り』を実現するための手術法に関して、文献的考察も含め報告する。