「Automatic isolation systemを使用する自己脂肪由来幹細胞を加えた脂肪移植の試み(Human adipose-derived cell assisted lipotransfer)」
第98回日本美容外科学会 / 2010年6月 / 東京院 院長 田中真輔
目的
昨今再生医療は多岐に渡り臨床応用されている。美容外科領域では脂肪注入は豊胸や顔面その他のaugmentationに最適であるが、生着率をいかに高めることができるかが最大の課題である。脂肪幹細胞移植による脂肪生着率の向上を目的としている。
方法
脂肪幹細胞抽出には米国Tissue Genesis社のTGI1200 Cell Isolation Systemにて行った。専用シリンジ(Lipevage®)にて脂肪幹細胞抽出用脂肪60ccを採取する。約1時間の行程を経て、脂肪幹細胞抽出液を採取する。この抽出液をさらに700g回転・3分間遠心をかけ、分離抽出した脂肪幹細胞を含むstromal vascular fraction(間質血管細胞群)を注入用脂肪組織と混合し、少量ずつ各層に満遍なく注入する。
結果
このシステムを使用しての脂肪幹細胞移植は2009年8月より2010年4月まで 16例(胸部注入10例、顔面注入6例)を経験した。胸部・顔面ともに経過観察の期間が短く継続中であるが、現在のところ生着と形体は良好な結果である。
考察
このシステムの特徴は機械本体が非常にコンパクトでデスクトップサイズ、また注入までの過程が簡便で約1時間で脂肪幹細胞抽出液を獲得できること、および脂肪組織1mlあたりから採取できる有核細胞量(数十万から百万個/ml)が多いことである。これは最高処理量が多いものの方が自由度が高いこととなる。今後は脂肪生着率の最も効果が高い脂肪組織量/脂肪幹細胞数の混合比率の解明が期待される。